ふとんのなかから

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫にかかったあとだらだらしている人のブログ

『ブッシュのアメリカ』を読む

ブッシュのアメリカ (岩波新書)

ブッシュのアメリカ (岩波新書)


新聞記者の著者が、日本のマスコミ報道には乗らないようなアメリカの現状を、アメリカ各地での取材を通してリポートしていく。期間はブッシュ大統領就任からイラク戦争後まで。出版時の2003年7月の段階ですでに「アメリカ人は選挙においてイラク戦争を問題視してはいない」ということを解き明かしており、たいへん秀逸な分析書といえる。


これを読んで「結局マイケル・ムーアの行動てのは都市部のリベラル派のほんの一部の運動でしかなかったんだな」と思い知らされた。町山智浩氏もこれを読んでいればあんなに華氏911賛美はしなかったんじゃないかな…。つまりは彼も都市部のリベラル派の一部の人だったということか。


分かったことまとめ

  • ネオコンアメリカ国内でも嫌われており、そもそもそれほど数が多くない。まるで世界を牛耳ろうとしているような印象があるが、それはたまたま現在ブッシュ大統領が勢力として認めているからであり、今後はどうなるか分からない。
  • ブッシュ大統領は熱心なキリスト教右派である。アル中だった頃、友人に誘われて聖書の朗読会に行ったのが宗教にのめりこむきっかけだった。代々のブッシュ家の政治思想は穏健派であり、現ブッシュ大統領は一族の中では異端といえる(一族とは宗派も違う)。でも一族の結束は固い。父親とは「41」「43」と自分の”歴代大統領番号”で呼び合っている(変な親子…)。
  • ブッシュ政権は過去の歴史を重要視しており、事あるごとにアメリカ史からの引用と(おそらく意図的な)誤用をする。批判されるとそれに反論するのではなく、何か別のものを持ち出して批判をかき消してしまう。政権の票基盤は中小都市・農村部の保守派と宗教右派。したがって「大都市のリベラル派が膨大な税金を払っているのに、政治的恩恵は中小都市・農村部の保守派と宗教右派に降り注ぐ」という逆転現象が起きている(日本と似ている部分がかなりあるような)。
  • 共和党内にも単独主義に反対する人がいるし、愛国法に基づくFBI捜査に対して「そんなの違法だから協力できない」と宣言する警察署長もいる。この辺りはまさに成熟したアメリカ民主主義の幅の広さを表しており、彼らのような人々がいる限り右に傾きすぎた振り子がまた戻る可能性は十分にある(そういえば「二期目のブッシュはこれまでと違うかもしれない」という意見もよく見かけるなぁ)。