ふとんのなかから

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「ジェニーはティーン☆ロボット」とは その2

シーズン1を振り返って

放映前の「ティーンロボット」は、ジェニーのビジュアル面での可愛さが評判になっていた。かくいう私もジェニーの”キャラ萌え”目当てで見始めた一人である。しかし実際に放映された「ティーンロボット」はけして単なるキャラ萌えアニメではなく、むしろ実にオーソドックスなカートゥーンであった。これは前述した通り美術設計による影響も多大にあるのだが、何より”キャラクターが動くことでそこにストーリーが生まれる”というカートゥーンの王道をいったストーリー展開であることが大きかった。


しかしそんなある意味”普通のカートゥーン”でありながら、どこか古き良き日本アニメの雰囲気を漂わせているのが「ティーンロボット」の面白いところだった。ジェニーの腕から自分の体より大きいレーザー銃が出てくるのはまるで往年のタツノコアニメのようだし、スーパーヒーローが何でもない日常にとけ込んでいて普通の生徒として学校に通っている、なんていうシチュエーションは過去の、特に昭和時代の色々なアニメで目にしたものだ。これが偶然なのか日本アニメの影響なのかは正直分からないが、とにかく「ティーンロボット」が日本アニメを見て育った者には特に楽しめるカートゥーンであることは確かである。


さて一通り作品について説明したが、これではまだ不十分である。なぜならこの作品の面白さとはつまりジェニーの持つ魅力とイコールだからだ。ではジェニーとは一体どういうキャラクターなのだろうか。


まずジェニーを知る上で「ティーンロボット」を等身大ロボットアニメと見た場合に一般的に持ちがちな先入観を正しておきたい。ジェニーは人間のティーンエイジャーの生活には憧れているが、人間になりたいとは思っていない。地球の平和を守る仕事にアイデンティティを置いていて、その仕事を苦痛を伴う義務とは思っていない(多少めんどくさいとは思っているようだが)。そしてそのためのロボットであることに対して過剰な正義への信念を抱えてもいない。つまりジェニーはこれまでの等身大ロボット(アンドロイド)には見られないほどニュートラルな精神構造を持っているのである。「ティーンロボット」は作品テーマからしピノキオ物語的なイメージを持たれやすいが、ジェニーは”十代に年齢設定されたロボット”としてティーンエイジャーの生活を楽しみたいだけであり、TV CMでいわれている「彼女の願いは普通のティーンエイジロボットになること」というのは実はとても的を射ているのである。


そんなジェニーを一言で表すなら自由奔放ということに尽きる。ジェニーは第一話でこそ笑うとき手で口を隠したり、ママであるウェイクマン博士の言いつけに従ったりと奥ゆかしいのだが、話数が進むごとに、人間社会に触れたせいなのかどんどん人間性が解放され性格がおてんばになっていく。シーズン1終盤の彼女はウェイクマン博士の言いつけを聞かないのは当たり前で、正義のロボットのはずなのに意中の相手とデートしたいためにわざと事件を起こしたり、怒って人間をぶん殴ったり、自分の主義に従って遊園地の労働用ロボットを人間から解放しようとする。これは余談になるが「ティーンロボット」のファンはジェニーのその人間的な魅力にあふれた、おっちょこちょいで怒りっぽくて惚れっぽくて誘惑に弱くて思い込みが激しい性格に、まるで近所に住んでいる慌て者の女の子のような親近感を感じ、親しみを込めてジェニーのことを「ジェニーさん」とさん付けで呼ぶことが多い。


というわけで劇中でジェニーは明るく元気なティーンエイジ・ロボットと描かれている。しかしそれならば、スーパーヒーローなジェニーであれば特に何不自由なく青春を謳歌してめでたしめでたしとなるはずなのだが、そうはならない。ここが「ティーンロボット」が「PPG」と最も異なる点である。パワーパフガールズたちと違い、ジェニーはスーパーヒーローなのに人間社会にとってはアイドルではなく異端者なのだ。実はこの世界でのロボットはまだ単純作業しかできない商工業用ロボットがその大半で、一般的にロボットは人間の下僕という扱いをされており、ジェニーのような人間社会に適応できる感情を持ったロボットはジェニー以外ほぼいない。そして皮肉なことに地球侵略をたくらむ人類の敵クラスターこそが機械生命体の惑星なのである。したがってジェニーはあからさまに差別をされて店への入店を拒否されたり、何度人間を助けても名前ではなく「ロボットガール」としか呼んでもらえなかったりする。そして学校の生徒たちはいつもジェニーを奇異の目で見ているのである。もっともこの辺りの描写は劇中で少しも深刻に描かれておらず、ジェニーもほとんど落ち込まないので「ティーンロボット」は一見するとお気楽なカートゥーンにしか見えない。しかしこの作品の裏側には実は、人類から拒絶されるヒーローが自分と同類の侵略者と戦いながら人類を守るという、まるで「デビルマン」のような深いドラマ性があるのである。

日本語版の幸せ

いくつかの偶然が作用して「ティーンロボット」は久しぶりに日本語版ならではの楽しみ方ができるカートゥーンになっている。”日本語版ならではの”というと往年のハンナ・バーベラ作品を思い浮かべると思うが「ティーンロボット」にはまさにあの図式が当てはまるのだ。


まずタイトルが原題とかなり違う。もっともこれは原題が「My Life as a Teenage Robot」とどうにも訳しにくいからだと思うが、そうだとしても「ティーンエイジ・ロボット」程度のタイトルでも良かったはずで「ジェニーはティーン☆ロボット」と☆マークが入っている辺りにスタッフのノリの良さを感じてしまう。


次に「ティーンロボット」のオープニングテーマには日本語バージョンがあるのだが、これがとっても愉快というか、変なのだ。歌詞自体は作品内容に沿っているのだが(特に「いつでも楽しいのが大好き遊んでいたいの」というのはまさにジェニーにぴったり)その歌詞を原語版のメロディーに合わせてむりやり歌っているので語呂が凄いことになっている。機会があればぜひ一度聴いてみて欲しい。ちなみに日本語バージョンは第9話以降から聴ける。(編注:日本語バージョンは8月の再放送から全話につくようになった)


最後に日本語版の楽しみといえば声優さんのアドリブだが、これも「ティーンロボット」にはふんだんに盛り込まれている。むしろジェニーの性格を考えると、原語版のJanice Kawayeさん演じるあまりしゃべらないジェニーより日本語版ジェニーの方が正しいといってもいい。その日本語版を演じているのは青二プロの佐々木亜紀さん。なんでも、原語でしゃべっていないところにも積極的に声を入れたり、感情表現も原語より強弱をつけたそうで、彼女のアドリブによって日本語版のジェニーはかなりはっちゃけた女の子になっている。また「ティーンロボット」はカートゥーンなのになぜかサブタイトルを「〜の巻」と読み上げるのだが、これも佐々木さんの発案だそうだ。いうまでもなく「忍者ハットリ君」の影響だそうである。

キャラクターリスト

  • ジェニー…ジェニー・ウェイクマン(またはXJ9)。生まれたときからティーンエイジャーなロボットの女の子。身長180cm、体重は不明。内蔵の武器と変形機能で街の犯罪者から宇宙の侵略者まで幅広く退治する。好きなものはイケメン男子。トレモートン高校に通っている。(声:佐々木亜紀/Janice Kawaye)
  • ウェイクマン博士…ノーラ・ウェイクマン。偉大な科学者にしてジェニーのママ。性格は神経質で年齢は中年より上。発明品には失敗作が多い。昔は正義の味方をやっていたらしい。既婚説あり。(声:斉木美帆/Candi Milo
  • タック…タッカー・カーバンクル。ウェイクマン家の隣に住んでいる小学生の男の子。ブラッドの弟で性格はかなり臆病。飛び込んだ野球ボールを取りにウェイクマン家に入ってジェニーと出会う。(声:青山桐子/Audrey Wasilewski)
  • ブラッド…ブラッドリー・カーバンクル。タックの兄でトレモートン高校に通う、飄々とした性格の男の子。暴走しがちなジェニーにあれこれアドバイスするがジェニーはちっとも聞かない。ジェニーとはあくまでも親友の関係。(声:松本孝平/Chad Doreck)
  • シェルドン…シェルドン・リー。トレモートン高校に通うギーク(おたく)でメカの天才な男の子。ジェニーに一目惚れし、ストーカー気味にあちこち追い回してはジェニーを困らせている。(声:深津智義/Quinton Flynn)
  • ブリット…ブリタニー・クラスト。ティフの従姉妹。トレモートン高校”おしゃれグループ”のリーダー格。何かにつけて目立つジェニーとは対立している。クラスト家は大金持ち。(声:えんどうさや/Moira Quirk)
  • ティフ…ティファニー・クラスト。ブリットの従姉妹で”おしゃれグループ”ではサブリーダー格。やはりジェニーとは対立関係にある。猫耳っぽい帽子がトレードマーク。(声:青山桐子/Cree Summer)

シーズン1サブタイトル

第1話A『ジェニーはティーンエイジャーの巻(IT CAME FROM NEXT DOOR)』
第1話B『悪いネズミをやっつけろ!の巻(PEST CONTROL)』
第2話A『遊園地は大騒ぎの巻(RAGGEDY ANDROID)』
第2話B『学校が火事だ〜!の巻(CLASS ACTION)』
第3話A『あたしのボーイフレンド?の巻(ATTACK OF THE 5 1/2 FT. GEEK)』
第3話B『タック砦を取り返せの巻(DOOM WITH A VIEW)』
第4話A『あこがれのピアスの巻(EAR NO EVIL)』
第4話B『UFOの無免許運転の巻(UNLICENSED FLYING OBJECT)』
第5話A『パーティ大好き!の巻(PARTY MACHINE)』
第5話B『あれ?通じな〜いの巻(SPEAK NO EVIL)』
第6話A『見えない敵の巻(SEE NO EVIL)』
第6話B『泥だらけのパーティーの巻(THE GREAT UNWASHED)』
第7話A『ロボットなんて大嫌いだの巻(THE RETURN OF RAGGEDY ANDROID)』
第7話B『呼ばれてばっかりの巻(THE BOY WHO CRIED ROBOT)』
第8話A『大変!妹たちが押し寄せてくる〜!の巻(SIBLING TSUNAMI)』
第8話B『どうしよう!あたしドロップアウト?の巻(I WAS PRESCHOOL DROPOUT)』
第9話A『ジェニー、どうしちゃったの?の巻(HOSTILE MAKEOVER)』
第9話B『勝利をつかめ!の巻(GRID IRON GRORY)』
第10話A『殺しのドレスの巻(DRESSED TO KILL)』
第10話B『恋の駆け引きの巻(SHELL GAME)』
第11話A『夢見るロボットになりた〜いの巻(DAYDREAM BELIEVER)』
第11話B『ジェニー大ピンチの巻(THIS TIME WITH FEELING)』
第12話A『ボーイフレンドはクールが一番?の巻(SAVED BY THE SHELL)』
第12話B『ジェニーロボット大会へ行くの巻(TRADESHOW SHOWDOWN)』
第13話A『ウィズリーのワンダフルワールドの巻(THE WONDERFUL WORLD OF WIZZLY)』
第13話B『ママ!うるさく言わないで!の巻(CALL HATING)』

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解説:
「TOON GUIDE2」に寄せた記事の後半部分。我ながらかなり暴走しておりますが後悔はしておりません(笑)。ファンが絶賛しないで誰がするんですかってのつんつん!


これを書いたあとで「レンゼッティは鉄腕アトムを参考にしていた」ということを知りやっぱりなぁと思いました。おそらく他に見ていた日本アニメにもどこか影響されているのでしょう。「子供の頃どんなアニメを見てましたか」と一度聞いてみたいものです。