ふとんのなかから

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫にかかったあとだらだらしている人のブログ

「下流社会」を読んだが

なんとなく「はぁそうですか」的な薄ぼんやりした感想しか浮かんでこない。


理由

  • 論理に対していちいちデータが付随しているがそれが「そんなにあげつらうほどか?」という程度の差ばかり。例えば「趣味をインターネットとする人が下流に95%いるから下流はインターネット好き」といってるけど上流も中流も75%はインターネットが趣味と回答してるわけで、それはただ全国民的にインターネットが好きになったってことじゃないのか(笑)。また著者は「PCは誰にでも手に入るようになった」と断言してるけど本当にそうか?ちなみに”PCは誰にでも手に入るようになった”ことに関する実証データは提示されていない。もう二ついうと「上尾の女子高生は大宮でこと足りるようになったから東京には出なくなった」といいつつも次のページの地図上のデータでは大宮の小売指数が上がっていないのはなぜ?さいたま市に合併したから?(なぜか上尾の小売指数は上がってるんだけども(笑))。あと「自己実現したがるのが下流」といってるけどじゃあ本書の最初の方に出てくる「上流階級出身で医大に通いつつも自己実現のため美容専門学校にも通ってる若者」はどう説明するんだろう。よく見るとなんか矛盾が多いんだよなこの本。
  • 下流は下層とは違う」とくどくど説明しながらもいつの間にか下流と下層を一緒くたに「下」と表現しており、「自分は下流だ」と思い込んだ人間を「自分は下層なんだ!アイゴー!」とミスリードさせようとしている。気持ちは分かるしいかにもマーケティング担当業の著者のやりそうなことだけどこれは許せない。著者は結局のところ「お前ら若者下流は下層なんだよ!ニートニートしやがってバカが!」と放言してうさを晴らしたいらしいけど(笑)それならそれ相応の論理を示すべきであってこのやり方ははっきりいって汚い(読んだら分かるが著者の若者向けベサツ感はかなり強い)。
  • さんざっぱら放言したのちあとがきで「下流ってのは仮説ですからええ」と開き直ってるのがもう一番「なんじゃそりゃあ」。だから結局「風説の流布をしたいだけかよ!」的な感想しか浮かばない。みんなこんな本に騙されちゃダメだ!下流なんてくだらないぜ!俺の歌を聴けえ!(笑)


ただし、ああだこうだと団塊ジュニア世代の、それまでの世代とは異なる生態を解き明かしてくれたのは唯一の好ポイントだったと思う。この世代は政治的にも社会的にも打ち捨てられた世代なので、このように早めに全世代に対し「おまいらがほったらかしにした団塊ジュニアが日本を滅ぼすぞよ」と警告していただくのはいいことです。思えばまだニートという言葉がなかった頃にも団塊ジュニアには大量の若年失業者がいたのに、その頃の選挙の主題といったら「介護保険」。そりゃ大量下流予備軍にもなりますってね…。


さてこの国の社会が二極化するのは誰の目にも明らかなので、今更そんなこと声高に言われてもほんとに「そうですね」と答えるしかない。問題はその先なのでそれを提示できていないこの本はあまり読む価値はないといえる。というかこれ社会構造が云々の本ではなくただの団塊ジュニア世代バッシング本ですから(笑)センセーショナルなタイトルに騙されないように…。


と思ったら週刊誌マスコミでは今やたらと「下流」という言葉を使うのがブームらしい。「心の闇」「負け犬」に続く便利ワード第三段というわけですか。やっぱりこの本はタイトルが全てということだなぁ。この出オチ新書め!買って損した。


なおここを読むとこの著者の著作に共通する変なところ(自己矛盾・やたらと偏った調査・始めに答えありきの酷い偏見・放言はいうが展望は示さない・ミスリード上等・今時の若者が本当に大嫌い(笑))が分かって面白い(「変な奴だが造語センスはすごい」というのは実に納得できる)。三浦展はトンデモ作家ということでひとつ!
三浦展研究・前編 〜郊外化と少年犯罪の関係は立証されたか〜】
http://kgotoworks.cocolog-nifty.com/youthjournalism/2005/09/post_4a27.html