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『中国はなぜ「反日」になったか』を読む

中国はなぜ「反日」になったか (文春新書)

中国はなぜ「反日」になったか (文春新書)


図書館で借りて、まだ途中までしか読んでいないが,事実に基づいた戦後の日中間の歴史分析をしており大変面白い。中国という国がいかに「戦略大国」であるかがよく分かる。中国にとって真の友好国というものは存在しない。世界中全てが敵国であり、敵国の利益を損ね、自国の利益を守ることが中国にとっての最大の「是」なのだ。だから能天気な日本外務省の思惑を遥かに越え、中国は戦略を用いて常に巧みな外交を行っていく。時には敵にすら笑顔を振り撒き、また時には敵を正面から恫喝し、また時には昨日までの敵と手を結び、また時には敵と手を切る。上野動物園にパンダが贈られた「日中友好」の蜜月期も、中国にとってはただの戦略の一つでしかない。「そのときたまたま、日本を敵に回したくなかったから友好的に振まった」にすぎないのだ。


したがって近年の中国の「反日」も、今現在そういう戦略だからでしかない。中国にとって歴史問題は日本を抑え込む有効な外交カードであり、サッカー場で大騒ぎした彼らやそれを報道した日本マスゴミも、江沢民のちょっとしたさじ加減に利用されているだけなのだ。倫理・感情的な側面にのみ捕らわれいたずらに意固地になっているのは中国と日本、はたしてどちらといえるだろうか。

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話変わって。

さて、小泉が「やる・やらない」をはっきりさせないときは「やる」ときである。おそらく今後も靖国参拝は当たり前のように続けるだろう。中国側はそれが分かっている。分かっている上で首脳会談を提案したのだろう。なぜなら小泉がこれまでの総理とは違う異常なほどの不誠実さを持っているから(しかもその不誠実さはなぜかいつも小泉にとって政治的に有利に働く)。中国としてはこれ以上小泉を追い込むつもりはないはずだ。小泉はもう十分に叱った。叱りすぎはよくない。日本を叱りすぎると金が取れなくなる。首脳会談では例によって歴史カードをちらつかせつつ、ODA引き上げについて何らかの措置を求めてくるはずだ。いつものようにマスゴミは歴史問題関連のことしか報道しないだろうが、どうか冷静な分析を求めたい。

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本についての補足。

70%ほど読んだ。近年の「反日」のターニングポイントは1995年、江沢民が愛国教育を推進したのがきっかけのようだ。なぜ愛国教育が反日に繋がるのか。それはこういうことだ。改革・開放路線は自由主義経済と共に国民の目を西洋へ向ける。中国首脳部としては経済が活発になるのは歓迎するが、その副作用として自由思想が氾濫し天安門事件の二の舞を起こされるのだけは回避したい。そこで求心力のなくなったマルクス主義に代わるものとして、愛国思想の出番となる。中国における愛国、すなわち中華人民共和国の根元的なアイデンティティとは何か。それは”解放闘争”である。かくして抗日戦線は60年ぶりの復活を果たす。


やはりここでも裏にあるのは戦略である。江沢民は歴史カードを自国民に向かって突きつけることで、資本主義と社会主義体制を両立させようとしているのだ。非常に面白い実験ではある。自由主義ではないグローバル経済は成立するのか?だが面白がってもいられない。どうやら我々はその実験のモルモットにされているのだから。