ふとんのなかから

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫にかかったあとだらだらしている人のブログ

吾妻ひでおの「失踪日記」を読む

失踪日記

失踪日記


こういう転落した人生を送っている人は、西原理恵子の漫画にはたくさん出てくる。彼らは皆一様に「街のどうしようもない人たち」というくくりの下に置かれることで、悲壮感を笑いへと昇華させられている。では吾妻ひでおはどうだったのか。


正直言って私は少しも笑えなかった。インタビューを読む限りでは笑いを目指していたのだろうが少しも笑えない。なぜなら徹底的に感情を押し殺したあまりにも端正で淡々と進む絵がコマが、その裏の事実の壮絶さを嫌がおうにも想像させるのだ。踏み込んではいけない領域の物語が読んでいるうちにコマの間からしみ出してくるのを感じてメチャメチャにつらい!これ心の弱い人は向こう側に精神を持って行かれるね。ヤバイよ。


しかしよくもまぁこんなに器用に立ち回りつつ自分を冷静に見られるもんだ。狂気の中で正常でいられるのが幸せなのかそうでないのかは分からないけど…。個人的には前半より後半のアル中病練の方が好きだ。吾妻ひでおの感情が少し見えてほっとするから。例えばP152の下段のコマなんかストレートに恐怖が伝わってくる。それだけ今の吾妻ひでおの精神が安定してるってことだろう。続編はきっと楽しい作品になるんじゃないだろうか。


ところで私は吾妻ひでおの作品はアニメの「ななこSOS」「コロコロポロン」くらいしか知らないと思っていたのに、これを読んで何か懐かしい感じを覚えた。ひょっとすると学研の化学か学習で読んだのかもしれない。