ふとんのなかから

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しあわせウサギのオズワルドとアメフトの関係

Wikipediaの「NBCサンデーナイトフットボール」の項目を読んでいたら興味深い記述がありました。

なお、マイケルズのNBC移籍に伴い、NBCユニバーサルNBCが放映権を保有するオリンピックのハイライト番組放映権をESPNに、ウォルト・ディズニーが制作し、ユニバーサル・ピクチャーズが権利を保有していた「しあわせウサギのオズワルド」をディズニーに譲渡している。

これは一体どういうことなのか調べてみると、どうもこういうことのようです。


時は1928年、まだ小さなアニメスタジオだったウォルト・ディズニー社はチャールズ・ミンツ社を仲介にし、ユニバーサル・ピクチャーズ社に配給を頼むことで「しあわせウサギのオズワルド」を製作しておりました。しかし「オズワルド」のヒットに欲目を出したユニバーサル・ピクチャーズとチャールズ・ミンツは「オズワルド」の横取りを画策し、ウォルト・ディズニーら三名をこの制作体制から追い出してしまうのであります。さぁドル箱作品と多数のスタッフを失ったウォルト・ディズニー。気楽な社長業から一気に窮地に追い込まれてしまうのでありますが、逆転の一手と製作されましたご存じ「ミッキーマウス」が起死回生の大ヒット。やがて人気を失った「オズワルド」は1943年を最後に製作されることもなくなり、ユニバーサルが権利を持ったままずーっと塩漬けにされてしまうのでございます。


さて、時は流れて2005年。かの弱小ウォルト・ディズニー社もすっかり一大企業となりまして今や放送局のABCを傘下に置いております。ABCの月曜夜のフットボール中継は解説:ジョン・マッデン/実況:アル・マイケルズという二人が担当しておりまして、これが長年に渡る大層な人気コンビ。しかしABCはこの年でフットボール中継から撤退してしまいます。これによって2006年からはABCの持っていた月曜夜の放映権が同じディズニー傘下のESPNに移り、ESPNの持っていた日曜夜の放映権がNBCに移るという玉突き状態が発生するのでございますが、さぁここで一大事。1998年の第32回スーパーボウル以来のフットボール放映権を得たNBC、何とジョン・マッデンとアル・マイケルズ、そしてマンデーナイトフットボールの主要スタッフをABCから根こそぎ引き抜いてしまいます。さぁさぁ大変なことと相成りました。元フットボール選手の解説者ジョン・マッデンと違い、アル・マイケルズは生粋のABCスポーツアナウンサー、そうホイホイとライバル局に移籍するわけにはいかないのでございます。


さてさて、そこで一計を案じたNBC。アル・マイケルズの移籍に伴い、ESPNにはオリンピックのハイライト番組放映権を、ABC・ESPN両局の親玉ディズニーには「しあわせウサギのオズワルド」の権利を、それぞれ譲渡することで手打ちとしたのでございます。さぁ、なぜNBCに「オズワルド」の権利があったのか。何と、かのユニバーサルは様々な企業に買収された果てにフランスのメディア企業ヴィヴィンディの傘下となり、ついには2004年にNBCと合併し『NBCユニバーサル』となっていたのでございます。かくしてユニバーサルがウォルトから奪い取った「しあわせウサギのオズワルド」は78年の長い時を経て、やっとディズニーの元に戻った、というかディズニーが初めて全ての権利を手にしたのでございます。近年「エピックミッキー」などでオズワルド君の姿を目にできるようになったのは、実はアル・マイケルズのおかげだったという一席、これにておしまい。


というわけで、オズワルドはいわゆる黒歴史だから封印されてたとかそういうわけじゃなかったんですね。いやぁ知らなかった知らなかった。ちなみにこのおっさんがアル・マイケルズ。2014年9月現在もNBCサンデーナイトフットボールの実況を担当しております。